キーワード:緑のカーテン(グリーンカーテン),ゴーヤー,効果 2014.08.01更新

徳島大学 河川・水文研究室


 緑のカーテン(グリーン・カーテン)の調査研究は,河川・水文研究室で行ってきた蒸発散研究で培ってきたノウハウを活用して,平成19(2007)年から田村が行っています.なかなか論文に昇華できないのが悩みですが,取り組みの成果を地域にすぐに還元できる点のが良いところです.2013年以降の「緑のカーテン」活動については田村隆雄のフェイスブックの中で随時紹介していますので,是非ご覧下さい.


■目次

  0) みどりのカーテンの効果とは

  1) みどりのカーテンの効果【1】

  2) みどりのカーテンの効果【2】

  3) みどりのカーテンの効果【3】

  4) みどりのカーテンの効果【4】

  5) みどりのカーテンの効果【5】

   6)  みどりのカーテンと台風

  7) 調査成果(講演発表) 

  8) みどりのカーテンの作り方2013

  9) 報道,資料提供の記録

  10)  みどりのカーテンを過信してはいけない

 11)  お礼

2008年8月4日撮影(実験用ミニハウスにて)

 


■2014年の緑のカーテン【update】

パッションフルーツ@ 2014.04.26


前景


パッションフルーツ

 2007年(平成19年)に取り組み始めてから,8年目の今年のメイン・カーテンは「パッション・フルーツ」です.るこう草を3年続けて飽きがきていたのと,やはり食べられる実がつく植物の方が楽しみがあるという理由です.また越冬させた大苗からカーテン作りをはじめることができるので,素早いカーテン作りが可能になるのではないか?という期待があります.2014年4月20日にカーテンのフレームを作り,26日にパッションフルーツをネットに絡ませました. 

パッションフルーツA 2014.08.01【new】


正面 

 
側面(ウイングの様子)(左:東,右:西)


南東 


南西


カーテン内部空間


カーテン内部(上部空間)


パッションフルーツの実(9月8日)


赤外画像(8月21日12時15分)

 定植してから約3ヶ月.両脇にウイングをつけて日光が入りにくく,冷涼な空間を長時間維持できるようにしています.現状では西側の方が立派なウイングです.7月27日に日射計(2),温湿度計(4),土壌水分計(2)を取り付けて性能評価に入りました.
 とりあえず4日ほど計測した結果ですが,@太陽光の90%を遮断できる.Aカーテン内外の気温差は最大3℃.B曇天でも午後2時頃にはプランター内の水分が涸れてカーテン内外の気温差がほぼなくなることが分かり,午後の暑い時間帯に発生する水切れをどう解決するかという問題が浮かび上がりました.

 大苗から始めましたが予想以上に時間がかかりました(予想では7月上旬に完成).パッションフルーツで緑のカーテンを作る場合は,できるだけ大きな苗を用意することが肝心です.

 パッションフルーツの花は気温が30度以上になる8月の前後6月〜7月,9月に咲きます.放っておいても受粉しないので,手間ですが人の手で受粉させてやらないといけません.大凡午前10時〜夕方まで開花していますが,受粉は開花直後から午後2時くらいまでの間が良いようです.受粉後2ヶ月かかって成熟します.上の写真のように赤くなると自然に落ちますので,落ちた実を拾って2日〜1週間,陽の当たるところに置いておくと,真っ赤に熟れます.パッションフルーツの外皮は食べないので,多少傷ついても問題ありません.4m×4mのカーテンで100個程度の実がつきます.

 8月21日の正午過ぎに十分な水を遣った状態で赤外画像を撮影しました.るこう草やゴーヤと比較すると表面温度が若干高めのような感じです(ゴーヤの赤外画像と比較する際は測定レンジに注意して下さい).

【パッションフルーツの良いところ(ゴーヤと比べて)
・丈夫  害虫がつかない.病気になりにくい.風で枝が折れても枯れることがない.
・長持ち 秋以降も成長して緑が続きます.うまくすれば越冬させることも可能.
・見栄え パッションフルーツを緑のカーテンにしているところはまだ少なく目立ちます.
・トロピカルフルーツを食べることができます.

【パッションフルーツの悪いところ(ゴーヤと比べて)】
・成長が遅い. 最終的には5m以上にもなるようですが,7月10日頃では3m程度の高さです.
・入手性が悪い. 大苗を手に入れるのが困難でそれなりの値段. 

 

■2013年の緑のカーテン


全景(2013/07/12)


冬の状況(2013/01/29)


るこう草の裏面(1)


るこう草の裏面(2)


るこう草


サーモ画像

 ゴーヤから始まった緑のカーテンですが,ここ3年ほど「るこう草(サイプレズバイン)」をメインに緑のカーテン作りを行っています.昨年,温度計などを使って『クーラー効果』を観測しましたが,まずまずの果を確認することができました.
 ゴーヤ,ヘチマのように食べられる実はつかず,その分の楽しみはないですが,代わりにかわいらしい小さな花を毎日咲かせますので鑑賞用としては勝っていると思います.また10月頃まで成長が旺盛なので残暑にも十分耐えることと,蔓自体が添え木やロープに巻き付いて伸びることや葉が小さいという点から,風害に比較的強いという特徴も台風が来襲する夏場に使う緑のカーテンとして見逃せない利点です.さらに大きな実をつけないことから,水消費量はゴーヤ,ヘチマより少ないようで,水やりも比較的楽だと思います.ただし,葉の重なり具合が弱いので,ゴーヤ,ヘチマを超える緑のカーテンになるか?と言えば,難しい感じがします.一言で言えば,「細く長く使える」緑のカーテンではないでしょうか.4月下旬から5月上旬のGW期に種を蒔けば,7月10日頃にはカーテンとして整います.

 


 

■はじめに.「みどりのカーテンについて」 (2014.04.26)

1.「緑のカーテンの効果」

 緑のカーテンの効果とは遮光効果と冷却効果です.前者は「よしず」や「すだれ」も持っている効果でわかりやすいものです.後者は植物の蒸散(植物内の水が水蒸気となって大気に放出される現象)が関係しています.

 [1]「冷却効果」蒸散で植物体が外気より低い温度に保たれ,涼しい陰ができる・・・という考え方

 植物の蒸散は葉の気孔付近で生じる水の蒸発現象です.水は気化するときに周囲から大きなエネルギーを奪います.蒸散はエンジンのラジエータと同じような働きをして植物表面を冷やします.そして緑のカーテンの表面温度は夏の日中の気温より低くなります(気温がおよそ30℃以上のとき).

 物体は赤外線を出します.この赤外線は物質を暖める性質を持ちます.蒸散が起こる生きた植物を使った緑のカーテンは表面温度が低いので,蒸散が起こらず熱を持つ「よしず」や「すだれ」と比較して,あまり赤外線を出しません.すると同じ陰でも緑のカーテンで作られた陰は暖まりにくくなり,涼しく感じられます......というのが緑のカーテンがもたらす涼しさの1つのシナリオです.

 [2]「冷却効果」蒸散が空気を直接冷やす・・・・という考え方

  2つめは蒸散が空気の直接冷却するという考えです.噴霧器,冷風扇と同じ仕組みと考えるものです.いろいろ調べてみるとこちらのシナリオの方が一般的に通用しているようです.しかし,この考えが正しいと仮定すると,植物体からの蒸散量が少ないように思われます.例えば水の気化熱を利用する冷風扇をWebで調べてみますと,1時間当たりの水蒸発量が15リットル/平方メートル以上(吸入気温30度,相対湿度50%)のような機種を見つけることができます(実際の水消費量は冷風扇のフィルター面積が1平方メートルよりずっと小さく数リットル/時間です).一方,ゴーヤーを使った緑のカーテンはというと,【調査観測事例4】より,最大で1時間あたり1リットル/平方メートル程度と見積もられ,冷風扇と比較すると水消費量は実に10分の1以下です.乱暴な比較ですが,蒸散による空気の冷却はそんなに大きなものではなさそうです.また【調査観測事例5】で計測したデータから絶対湿度を計算すると,緑のカーテンでできた陰にある水蒸気量は「よしず」の陰にある水蒸気量と変わりませんでした.つまり,家庭で使用するような大きさが縦横数メートル程度の緑のカーテンでは,蒸散が周囲の空気を直接冷やす効果はほどんどないのではないかと思われます.

[3]「冷却」ではなく,「保冷」,「温度上昇抑制」

 緑のカーテンには「よしず」や「すだれ」にない「冷却効果」があることは観測データから疑いない事実です.ここまで「冷却」という言葉を使ってきましたが,緑のカーテンの効果は穏やかですので,実態を表すには「冷却」という言葉より,「保冷」とか「温度上昇抑制」と表現する方が適切だと考えています.

 

2.緑のカーテン,期待できること

 「緑のカーテンを作るとエアコンが要らない」という意見は極端だと思いますが,エアコンを使うにしてもかなり電気代を抑えることができます.これは緑のカーテンによって建物表面の温度上昇をかなり抑えられ(条件によりますが,10℃以上),建物内部への熱流入量が大幅に減って空調効率が良くなるためです.2010年に調査した郵便局の緑のカーテンは一夏で30%以上の空調用電力を節約出来ることが分かりました.しかし一般家庭ではこれほどの効果は望めません.大きな理由としては,一夏通じて平日の日中にエアコンを使いっぱなしといことはほぼないからです.日中に人が居てエアコンを使うことが前提の場所(オフィス,商店,工場,学校など)こそ,緑のカーテンが真の力を発揮できる場所と言えると思います.

 

3.緑のカーテン,考えて欲しいこと

 「緑のカーテン」は生き物です.肥料も要りますし,水も必要です.プランターや土の準備が必要です.7月〜9月の3ヶ月の効果を期待するために,4月から準備をする必要があります.後片付けも大変です.太陽光がない夜間や雨の日には機能しません.蒸し暑さは解消されません.台風がくればせっかくの努力が無駄になる可能性もあります.単に「電気代の節約」が目的だと,とても割りにあいません.緑のカーテンはエコですが,それはエコロジー(環境にいい)であって,必ずしもエコノミー(倹約)ではなりません.そのエコロジーも場合によっては怪しいです.トータル的なコストと効果を考えれば「よしず」や「すだれ」がずっと上だと思われます.「植物を(育て,見て,食べて)楽しもう,そのついでに電気代も節約できたら良いな」という動機ではじめないと成功しないように思われます.

 

4.緑のカーテン,成功するコツ

 植物を育てるには愛情が必要です.具体的に言うならば,「毎日,面倒(水遣り)を見れること」「植物の変化に気づけること」の2つではないでしょうか.緑のカーテンをよく見かけるようになりましたが,たいへん上手に綺麗にできているものがある一方で,とてもカーテンとは言えないようなものも少なからずあります.その違いは何か,ここ数年,研究・調査の中でカーテンの世話をしている大勢の方とお話ししてきましたが,一番の鍵は「人」だという事を感じました.毎日の植物の世話を当たり前のように,義務感でなく,楽しみながらできる人が一人でもいるところはほぼ成功しているようです.

 

■みどりのカーテンの効果【調査観測事例1】(壁面の温度上昇抑制効果)

【概要】

 2008年7月27日に田村宅のゴーヤー・カーテンをサーモトレーサで撮影したものです.左上と左下,右上と右下がそれぞれ対になる可視画像と赤外画像です.左の写真を見ると,ゴーヤー・カーテンで陰になっている壁面の温度が約37℃(青色),太陽光があたっていない壁面(単なる日陰)の温度が約45℃(オレンジ色)であることが読み取れます.右の写真からは直射日光が当たっている壁面の温度が50℃以上(白色,ただし測定レンジを超えているようなので実際には60℃以上と思われる)であることが読み取れます.つまりゴーヤー・カーテンを設けることによって建物外壁の温度上昇を10数℃抑えることができることが分かります.抑制できる温度は建物外壁の材質や色によって上下すると思われますが,この温度上昇抑制効果は空調機器の負荷軽減に繋がると考えられます.

 ゴーヤー・カーテンに精力的に取り組まれている鳴門高島郵便局で,ゴーヤー・カーテンが不良だった2007年(徳島市8月平均温度28.6℃)とゴーヤーカーテンが見事に成長した2010年(徳島市8月平均温度29.4℃)の空調用に使用している動力の記録を見せて貰ったところ,2010年の消費電力は2007年より34%少なくなっていました(詳細はこちら).一般家庭でこれだけの効果を期待するのは難しいと思われますが,ゴーヤー・カーテンの省エネ効果がよく分かる例だと思います

 


■みどりのカーテンの効果【調査観測事例2】(温度計,温度の経時変化)

 

【概要】

 2010年8月で最も気温の高かった8月18日における徳島市北部浄化センターと鳴門高島郵便局の「みどりのカーテン」内外の温度差の記録です.北部浄化センターでは11:00に最大5.7℃の差,鳴門高島郵便局では09:20に最大4.5℃の差が認められました.北部浄化センターの「みどりのカーテン」は南向きに設置されたもので,鳴門高島郵便局のそれは東向きに設置されたものという違いから,温度変化の様子や最大温度差に違いが出ています.16時以降に差が見られない1つの理由は土壌水分量の欠乏だと思われますが,詳しくは検証しておりません.カーテン外部と内部の温度計測には,それぞれ直射日光除けの笠(通気性を確保した紙コップ)をつけて計測条件を揃えていますが,笠は簡易的なものですので正確に「気温」を測れているとは限りません.

 


■みどりのカーテンの効果【調査観測事例3】(『よしず』との比較)

 「緑のカーテン」vs.「よしず」 約1.2MB,(pdf)

  【概要】

 「手間の掛かるみどりのカーテンなんかしなくても,『よしず』があるじゃないか.」という疑問について考えます.本邦初だと思いますが,2008年にミニハウスを2棟建てて「ゴーヤー」対「よしず」の比較実験を数種類行いました.

 窓を開けて外気を積極的に室内に取り込んだ場合の室温比較実験では,「ゴーヤー・カーテン」を設置したミニハウスの室温だけが外気温より低くなりました.これは緑のカーテンの冷却効果だと推測されます.生きていない「よしず」には期待できません.左のサーモグラフィーは,よしず(左)とゴーヤー・カーテン(右)の表面温度を比較したもので,「よしず」よりもゴーヤー・カーテンの方が蒸散によって5℃以上低くなっていることが読み取れます.

 この実験は手間のかかる緑のカーテンを使う意義の確認であり,「よしず」や「すだれ」を否定するものではありません.緑のカーテンは使えるようになるまでに時間が掛かります.また使える期間も限定されます.管理も大変です.状況によって両者を使い分けること,組み合わせることが大切だと思います.
 この実験の成果は,
所さんの目がテン(#1134,2012年6月9日) 〜夏を涼しく(秘)エコ作戦〜 で紹介されました.

 


■みどりのカーテンの効果【調査観測事例4】(冷却効果を得るための対価

 【概要】

 「みどりのカーテンの冷却効果の代価としてどれだけの水が必要か?」という疑問を解決するために,プランターの中に土壌水分センサーを設置し,日々の水分変動を観測しました(左図).

 対象としたゴーヤー・カーテンは約80リットルの果樹用プランターで育てた面積4.5平方メートル(京間2.5畳相当)の南向きのものです.観測の結果,日の出と共に土壌水分量が平均2%/hrの速さで減少することが確認できました.これは2.7m×1.8mのみどりのカーテンを使用した場合,日中(日の出から日の入りまでを13時間として計算)に約14リットルの水が必要ということになります.バケツ1杯が5リットル〜10リットルですので,皆様の予想を上回るの水量ではないでしょうか.効果の見返りはそれなにり大きなものと言えます.水資源に不安な地域では緑のカーテンは控えめにした方が良いかもしれません.

 


■みどりのカーテンの効果【調査観測事例5】(水を切らすと「遮光効果」だけになる)

【概要】

 「水を切らしたら『みどりのカーテン』の冷却効果は期待できない?」という疑問について考えてみます.左の図は2008年8月12日,13日,15日の日中に観測された,ゴーヤー・ハウスとよしずハウスの室内温度の比較図(日の出〜10:20)です.赤が水切れ状態の15日,青が水が十分供給されていた12日と13日です.【調査観測事例4】を参照.

 3日間とも晴天で,緑のカーテンの効果が十分に発揮される条件が整っていました.水が十分にあった12日と13日は室温が30度を超えたあたりで,ゴーヤー・ハウスの室温の方がよしずハウスの室温よりも低くなりましたが,水切れの15日は室温に差が生じませんでした.15日の10:20にゴーヤーに給水したところ,15分程度でゴーヤーは回復し,ゴーヤー・ハウスの室温も12日と13日と同じ室温まで低下しました.この結果から,みどりのカーテンの冷却効果を発揮させるためには水を切らしてはいけないことが分かります.

 


■みどりのカーテンと台風【調査観測事例6】(台風に強い緑のカーテンの条件)

 平成23年は7月から9月にかけて,台風6号,12号,15号と3つの大きな台風が襲来し,緑のカーテンにも多大な被害が出ました.多数のカーテンを調査してみると,致命的な被害を受けたカーテンが出た一方で,ほとんど影響を受けなかったカーテンもありました.大きな被害を受けたカーテンに共通して見られた特徴は以下の通りです(ゴーヤー・カーテンの場合).

 

 【被害が大きかったカーテンの特徴】

 1) フレームや支柱にネットが固定されていない.あるいはフレームや支柱の間隔が大きかった.

 2) カーテンが鉛直に設置されていた.

 

 大きな被害が出た一番の原因はネットの問題のようです.ネットが固定されていない場合や固定が弱い場合には,強風があたるとカーテンが大きく揺れます.加えてゴーヤーはヒゲでツルを支えていますので,植物自体の揺れは相当激しいものになります.そのためツルの一部に大きな力が繰り返し作用して折れてしまったと思われる事例が多数ありました.ツルが折れる(痛む)と十分な水分や栄養分が葉に行き渡らなくなりますので,数日をかけてツル単位で枯れていきます.極端な場合に根元から傷んで株全体が枯れた例もありました.

 ネットがしっかり固定されている場合には強風があたる箇所の葉が部分的にちぎれ飛んでしまうことはありますが,ツルが傷んだり,カーテン全体が痛むような致命的な被害は出にくかったようです.またフレームや支柱へのネットの固定具合が同じようなカーテンを比べると,斜めに設置されたものの方が鉛直設置されたものと比べて痛み方が少ないようでした.恐らくカーテンの重みがネットの揺れを抑制するように働いたものと思います.

 

 2011年に作成した2種類のゴーヤー・カーテンの事例を紹介します.1つはネットに這わせた通常のゴーヤー・カーテン(カーテン1)で,支柱は付けているものの揺れやすいタイプ(『3匹の子豚』の物語で言えば”わらの家”),もう1つは完全に固定された金網(フェンス)に這わせたゴーヤー・カーテン(カーテン4)で全く揺れないタイプ(”煉瓦の家”)です.わらの家タイプは台風6号で大きなツルが2本も傷んでしまい,台風12号ではカーテン全体が飛ばされるという大きな被害を受けましたが,煉瓦の家タイプは2つの台風で何枚か葉が飛んだものの,ツル単位で枯れるような大きな被害は出ませんでした.このカーテンは台風15号が過ぎた9月末でも元気で,実をつけ続けました.

  以上の事から考えると,ネットはできるだけ固定すること(揺れないようにすること)が,台風に強いみどりのカーテンの条件だということが分かります.

 

 


■成果

●土木学会四国支部技術研究発表会 発表原稿&スライド【pdf】

タイトルと概要

2009年

「ゴーヤーを用いた緑のカーテンの室温上昇抑制効果に関する観測実験」  スライド

 緑のカーテンの効果を検証するために2つのミニハウスを建て,「ゴーヤー・カーテン」と「よしず」とを比較してみました.「ゴーヤー・カーテン」は「よしず」よりも30%高い温度上昇抑制効果を発揮すると見積もられました.そのために必要な水量はカーテン1平方メートルあたり約3リットル(1日あたり)と見積もられました

2010年

「緑のカーテンの気温上昇抑制効果の検証と二酸化炭素排出削減量の推計」 スライド

徳島市入田コミュニティーセンターにおける温度上昇抑制効果と省エネ・二酸化炭素排出削減量の推計を行いました.コミュニティーセンターでの効果は20%程度と見積もられました.かなり粗い試算ですが節約できた電気料金と使用した水道料金とを比較も試みました.

2011年

「2010年酷暑における緑のカーテンの効果に関する調査」  スライド

 徳島市北部浄化センターや鳴門高島郵便局等で得られた多数の観測データを用いて,希にみる酷暑となった2010年夏における緑のカーテンの効果を考察し,鳴門高島郵便局では34%もの省エネ効果があったと見積もられました.またカーテンと壁面の間には十分な空間が必要であるという知見も得ました.この成果は四国新聞一面コラム『一日一言』(2011年5月20日)で紹介されました34%という値は過大に思えますが,家庭用エアコンを使用した中部電力の研究(参考:「緑のカーテンキャンペーン」,住まいとでんき,Vol.25,2013 May,日本工業出版)でも,21%〜42%の節電率が認められています.

2013年

「緑のカーテンの現状調査と行政の取り組みに関する調査研究」 スライド

 多くの自治体で環境施策の一環として採用されている「緑のカーテン」.しかし街中をみると効果が見込めない管理不足のカーテンも少なくありません.そこで家庭用の小さなカーテンの効果の検証,自治体の取組み調査,徳島大学周辺の緑のカーテン(約600件)の現状調査を行いました.

 


■みどりのカーテンの作り方など

 (1) みどりのカーテンの育て方2013 ダイジェスト版  約6.3MB (2013/05/20up)

 (2) 種から育てるゴーヤー・カーテン Ver.1  約0.6MB, (2011/05/20up)

 (3) 「緑のカーテン」るこう草(サイプレスバイン)2012年の事例 約0.5MB(2013/05/20up)

 ご利用の際は,ページ最後の連絡先まで御一報下さいますと,バージョンアップの動機付けになります.

 公開している物は2013年5月12日に行いました「みどりのカーテンの育て方」講習会(@新居浜市)で使用したダイジェスト版です.

※数年間の調査研究成果ならびに経験を踏まえて書いておりますが,誤りがないと言い切れません.

※「緑のカーテン」としての機能を発揮させること(蒸散による冷却効果を最大限に引き出すために葉量を増やし,給水量も多い)を第一に考えた育て方・管理方法です.収穫を第一目的とした育て方(葉は最小限で収穫量を増やす,給水も必要量のみ)とは異なります.この点に十分ご注意下さるようお願いします.

※今年,初めて「緑のカーテン」に取り組む方が多いと思いますが,毎日の世話が欠かせません.お盆休みが「緑のカーテン」の世話で費やされることも覚悟の上で取り組んで欲しいと思います.

 


■関係する報道(新聞,テレビ,ラジオ),資料提供(雑誌,パンフレット,テレビ),論説(雑誌)などの記録

 2014.08.01現在

 

 1) 省エネ効果を数値化へ ゴーヤーを使った「緑のカーテン」,徳島新聞,    2007.05.29.

 2) 「緑のカーテン」2年目の夏,朝日新聞(徳島版),    2007.05.31.

 3) 「自然の力で涼しい夏を」,おはようとくしま,四国放送,    2007.08.07.

 4) ゴーヤーで緑のカーテン,産経新聞(徳島版),    2007.08.29.

 5) 2年目も生育順調 上板町役場のゴーヤーカーテン,徳島新聞,    2007.08.30.

 6) 上板グリーンタウンミーティング,かみいたテレビ,    2007.09.01.

 7) 上板町の庁舎窓際ゴーヤー栽培実験,読売新聞(徳島版),    2007.09.02.

 8) 上板町役場緑の日よけ効果,徳島新聞,    2007.09.02. 

 9) 「天然クーラー」証明,朝日新聞(徳島版),    2007.09.03.

10) 「緑のカーテンをつくろう」,530フォーカス徳島,四国放送,    2008.06.18.

11) 「ぴーぷる」,徳島新聞,    2008.08.09.

12) 環境異変第5部・うだる列島,乾く川,地方紙・共同通信企画,徳島新聞等,    2008.08.13.

13) 徳島のニュース,NHK総合,    2008.09.16.

14) ふるさとラジオ「列島リレーニュース」,NHKラジオ第一,    2008.09.16.

15) 徳島県上板町「ゴーヤで創る環境のまち」(平成19年度地域づくり総務大臣表彰 31団体の活動) (財)地域活性化センター・制作ビデオ

16) ゴーヤーで冷却省エネ効果報告,朝日新聞,    2008.09.23.

17) 屋内気温1.8度低下,徳島新聞,    2008.09.28.

18) 緑のカーテン,琉球新報,    2008.09.17.

19) エコアクション21 広報DVD(ミニハウス画像),あいおい損害保険株式会社,    2009.07.

20) 緑のカーテンモデル事業「緑のカーテンの効果」,徳島市ホームページ,    2010.01.06.

21) 緑のカーテン増殖中,朝日新聞(愛媛版),    2010.08.12.

22) 緑のカーテンモデル事業「緑のカーテンの効果」 徳島市ホームページ,    2011.02.15.

23) 一面コラム『一日一言』・緑のカーテン,四国新聞,1面(総合),    2011.05.20

24) 『スッキリ!!』,日本テレビ,    2011.06.23,(資料提供)

25) 緑のカーテン 効果学べ 韓国から視察団,徳島新聞,19面(地域),    2011.09.01

26) あすたむゴーヤー緑のカーテン『親子ふれあい学習』チラシ,あすたむらんど徳島,    2012. (写真提供)

27) 所さんの目がテン(#1134) 〜夏を涼しく(秘)エコ作戦〜 ,日本テレビ,    2012.06.09,(実験協力,資料提供,コメント)

28) 緑のカーテンの仕組みとその効果,住まいとでんき,2013年5月号(Vol.25, No.5),pp.13-16,日本工業出版.

29) ゴーヤーでみどりのカーテンをつくろう,パンフレット,大洲環境とエネルギー研究会,    2013. (資料提供)

30) 平成26年度適性検査(資料14,資料15),千葉県立千葉中学校,    2013. (資料提供)

31) データで見る緑のカーテン,NHK趣味の園芸「これでわかる!緑のカーテンの育て方」,p.63,NHK出版,    2014.04.21 (資料提供)

32) 「宮川大介・花子のハテはてな?」,”まだ間に合う!グリーンカーテンの作り方って?,山陰放送,    2014.05.25,(資料提供)

 


☆ 過度な期待は禁物 「みどりのカーテン」の効果は高いですが,カーテンの規模・形状,葉の密生度,気候・気象条件,建物形状・材質・構造等,様々な影響を強く受ける「不安定な省エネ策」であり,加えて毎日の世話(施肥,給水など)が欠かせません.日々の水やりのために夏休みに遠くへ旅行できないという事もありえます.夏の終わりに「『ちょっとは役に立ったかな』と言えれば良い」くらいの気持ちで臨まないと後悔します.

☆ お礼 本研究は上板町(徳島県),徳島市(徳島県),新居浜市(愛媛県),NPO「みどりのカーテンをひろげる会」(徳島市),他,多数の御協力のもと進めてまいりました.この場をお借りして御礼申し上げます.成果が少しでも皆様の生活でお役に立てれば幸いです.

 

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